ベガルタ仙台の通信簿:2017年J1リーグ

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リベロの河童
投稿者: ( 河童戦術ブログの管理人 )
公開日:2017年12月03日( 1週間前に投稿 )

きっかけは永戸勝也というめちゃくちゃ面白そうな素材を見つけたことから始まったんですけど、ベガルタ仙台の試合を2~3試合見たあたりから『これはすごいぞ』という感じになりまして、今季は特に注目してベガルタ仙台をチェックしていました。というわけで今回は通信簿的なものを独断と偏見で勝手につけてみようかと思います。もしよろしければ今季書いたベガルタ仙台関連の記事を今一度読んでいただけるとさらに楽しめるかもしれません。

 

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リーグ順位や成績面/★★★☆☆

今季のベガルタ仙台は11勝8分15敗、44得点53失点(-9)で勝点41の12位という結果でした。なお昨季の数字は13勝4分17敗、39得点48失点(-9)で勝点43の12位でした。リーグ戦の数字だけを見た限りでは昨季とほとんど変わらないですし、大きな変化が無いようにも映るわけですがスタイルの大幅な変更によりその中身というか質はかなり異なっています。

またルヴァンカップでは準決勝まで進出し、リーグ優勝した川崎フロンターレを本当にあと1歩のところまで追い詰めていました。まあ今季のスタイルの楽しさや面白さと同時に、戦術だけですべてがひっくり返るわけではないというのも感じることができた試合だったような気もします。そしてニューヒーロー賞に西村拓真が選ばれましたね。

天皇杯は残念ながら2回戦で筑波大学に破れ、早々に敗退することとなりました。まあJ1クラブとしては少し残念な結果ではありましたが、筑波大学は本当に素晴らしいチームでした。ベガルタとしては戦術を浸透させるためにかなり固定されたメンバーで試合を消化していたこともあり、この試合で起用された選手たちのパフォーマンスはあまりよろしくなかったんですよね。この部分に関してはシーズン終盤になると改善されているように感じます。

 

戦術面について/★★★★☆

ベガルタ仙台を何気なく見ていて気づいたとき(6月26日)に「仙台とペップバイエルンって似てない?」とツイートをしたのですが、このときは正直言って反応はほとんどなく『こいつは突然何を言ってるんだ?』状態だったのを覚えています。当初はマジで冷ややかな視線を向けられていたわけですが、それでもいろいろな局面を切り取ってひとつひとつ説明をしていくうちに、徐々に理解が広まり「そういえばそう見えなくもないかな…」という感じになってきたように思います。

で、今季のベガルタ仙台は欧州クラブがやっているようなスタイルが随所に見受けられるようになりました。特に注目なのが『個人ごとにスタイルがあるのではなくポジションごとに明確な役割がある』ということ。基本的に攻撃時のポジショニング、守備時の動き方というのはポジションごとに決められいるようですし、それが共通認識として「このポジションならこういう状況ではこう動くんだな」と理解されていているように感じています。そのため基本的には誰がどのポジションで出場しても、求められている役割を理解しているためスムーズに動けています。たしかに強烈な個を持った化け物レベルの選手がいるわけではありませんが、全員が求められる役割を理解し共通認識を持って戦えば、その差はいくらかは埋められると。

このようにJ1で生き残るため、またJ1で上位を狙っていくためにあらたなプレーモデルを確立して戦おうとしたクラブはなにもベガルタ仙台が初めてというわけではありません。ただし、ここまでスタイルを明確にして舵を切り、それをシーズン通して貫いたクラブというのは実は多くないんですよね。大抵は降格が見えてきたタイミングで「やっぱりまずは残留」といって従来のスタイルに戻して自陣のゴール前に篭ってしまうパターンが多く、そうやって徐々に通用しなくなって降格してしまうというのを何度も見てきました。今季のベガルタも実は降格圏が見えてきた時があったわけですが、それでも監督と選手が戦い方を変えず貫いたというところが一番評価すべきところではないでしょうか。それによって、昨季までと最終的な勝点というのはほとんど変わらなかったものの、伸びしろはこれまでと比べものにならないほど感じることができます。

 

フロントのマネジメントについて/★★★★☆

今季のベガルタ仙台の主力選手たちなんですが、実は半分近く(多いときは半分以上)の選手がレンタル移籍で加入した選手たちです。石原直樹(浦和)、野津田岳人(広島)、中野嘉大(川崎F)、古林将太(名古屋)、増嶋竜也(柏レイソル)、クリスラン(ブラガ)など。特に古林や野津田というのは的確で素晴らしい補強だったように感じます。今季の仙台って実は主力選手の故障が多くなかなかベストメンバーが組めない状態が続いたわけですが、それでも誰がどこで出場しても素晴らしい働きをしていたと思います。戦術面でも書いたんですけど、ポジションごとに明確な役割があるため、故障者が出たとしても他の選手がしっかりとカバーできていましたね。

資金が豊富にあるわけではないクラブがその差を埋めるために戦術面、戦略面を工夫することでカバーしたと言えるかもしれません。このやり方は他の低資金で運営しているクラブのお手本になるやり方だったと思いますし、今後はベガルタ仙台を参考にしてJリーグを戦おうとするクラブも増えると思います。

そしてもうひとつ。渡邉監督がやろうとしているサッカーを『たとえ結果が出ていなかったときでも信頼し続けた』フロント陣が素晴らしかったと思っています。今後のJリーグを見据えたときに、今のままではいずれ降格するという危機感があったのではないかと思われます。J1で生き残るため、また資金差のあるJ1で上位を目指すためには必要なことでしたし、それを我慢強く見守ったフロントは良い仕事をしたと思います。サッカーを理解せずすぐに結果がでないからと監督を代えてしまったりスタイルを戻すよう強要するところもありますからね。

 

選手の育成や成長/★★★☆☆

今季のベガルタ仙台はレンタル選手を上手に使ってやりくりをしたわけですが、もうひとつ『生え抜き選手の成長』も注目ポイントです。自分が今季一番惹かれた永戸勝也をはじめ、ルヴァンカップでニューヒーロー賞を獲得した西村、終盤になって伸びてきた蜂須賀あたりは本当に良かったですね。特に永戸や西村は将来的に日本代表を目指せる素材だと思いますし、他のクラブに獲られないか心配なほど。

また負傷者がでたりアクシデントなどでひとりの選手がいろいろなポジションをやることが多く、そのなかで結果を出したことで選手それぞれのプレーに幅が出てきたように感じます。CBの大岩なんかも、最初は誰かの変わりで中央のCBをやらざるを得ない状況になってやらせてみたらうまく機能してそのままポジションを獲得したり。

ただし、全員がそうなったわけではなく、例えばリャンのようにチームの成長に乗り遅れてしまった選手も残念ながらいたりします。まあそういう選手が腐らずチームを助けたのは評価できるのですが、大きく伸びた選手がいるなかであまり伸びなかった選手も数人いました。そういった選手が今後どう考えるのか、そういったところも今後は注目です。ベテランが伸びるというのはチームにとって大事なことですからね。

 

サポーターについて/★★★★☆

これまでのベガルタ仙台というのはどちらかというとリアクションによってサッカーをするチームだったんですけど、今季からは自分たちからアクションを起こしてゲームを支配しようとするサッカーに変わりました。そのため、自分が仙台に注目しはじめた6月ころは監督やフロントや選手、そして戦い方に対してかなり批判が多かったように感じます。最終ラインでバックパスや横パスをするとブーイング、自陣で繋ごうとして失敗すれば批判し、何をやってるんだ去年までのやり方に戻せと苛立っていたようでした。

しかしそれが徐々に変わりはじめます。チームがやろうとしているサッカーを理解しようとサポーターも学び、どうしてここでバックパスをするのか、なぜGKに戻すのか、何が「良いプレーなのか」というサッカーを見る目が徐々に根付きはじめ、最初はブーイングが飛んでいたプレーでも「それがなんのためのプレーなのか」を理解するようになり、ポジティブトランジションで相手のプレッシングを上手に回避したとき、CBからハーフスペースのライン間でポジションを取った選手に縦パスが通ったとき、サイドに相手をおびき寄せて逆サイドへ展開したときなどで拍手が起きるようになりました。これはすごい進化だと思います。

つまり今季のベガルタ仙台は選手や監督が成長したこともありますが、サポーターが成長したシーズンでもあったのではないでしょうか。これはほんと明確に感じます。仙台サポのサッカーを見る目は本当に成長したと思いますし、ゴールや失点だけでなく、いまピッチの中で何が起きているのか、選手たちは何を狙っているのかを理解し、感じ取れるようになったと思います。これは正直うらやましい。

 

最後にひとこと

順位は去年と変わらず数字だけを見たら平凡なシーズンを過ごしたように感じるベガルタ仙台ですが、中身は思いっきり変わりました。チームの土台がしっかりとできたように感じますし、来季に向けて可能性を感じることができる内容だったと思います。

これから来季に向けた準備で大事になるのは「レンタルで借りてる選手を残せるか」というところがまずひとつ。主力の半分近くが他クラブからの借り物ですし、簡単に言うと「借りパクできるか」が重要になるかもしれません。いやレンタル元のクラブが「帰って来い」と言ったら無理なのかもしれませんけど、なんとかして残留させることができれば大きな補強となりそうです。借りパクは正義。

そして戦術面ですが、今季は3-2-5のポジショナルプレーをつくりあげることができました。次に必要になるのは「3バックと4バックの併用」というのがあります。基本的に4-4-2の相手に対して3-2-5はとても相性の良いシステムなんですけど、これはそのうち対応されるかもしれません。そのため、今後は相手が2トップなら3バックで、3トップなら4バックで対応するとか柔軟性が必要になってくると思われます。今季はCBの間にボランチが落ちて4枚にするなどの工夫はしていましたが、今季築いたベースの上にどう上積みしていくのかに注目です。

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