ベガルタ仙台分析:なぜ仙台はカウンターを頻繁に受けるのか

カテゴリ /  サッカー / タグ /  / 
リベロの河童
投稿者: ( 河童戦術ブログの管理人 )
公開日:2017年06月28日( 5か月前に投稿 )

ベガルタ仙台が今季取り組んでいるサッカーについて、なるべく専門用語は使わずにどなたでもわかりやすい表現で切り取っていこうというこの連載ですが、少し難航しておりました。それでもせっかく始めたのですから、もう少し頑張ってみようと思います。で、表題の件ですが、これは仙台がまだ出来ていない部分です。よって今後修正していくべき箇所かと。

このカウンター対策ついては、スペースを支配しようとするチームに対して、ボールを支配しようとすればするほど避けて通れない万国共通の課題でもあります。バイエルンだろうがスペインだろうがドイツだって同じです。ただし、そこの完成度の違いにより、今季の仙台は結構カウンターを受けやすい状態になっていますね。

ボールを握って相手を押し込んでいるわけですから、相手の後ろにはカウンターを仕掛けるスペースがほとんど残っていません。逆に自分たちの後ろにはカウンターを仕掛けるのに絶好の大きなスペースが広がっています。まあ当たり前の話ですけどね。というわけで今回はその辺について。

ではここで『ペップグアルディオラ キミにすべてを語ろう』のなかの『デスコルガードの対処』という項目から、ペップバイエルンが被カウンターについて意識していた対処法などを抜き出してみます。ちなみにデスコルガードというのは簡単に言うと「攻め残り」です。守備のときにカウンターを狙って一番前にいる味方というか。4-4-2だったら「2」の人たちですね。

ボールを支配したいバイエルンは、このような効果的なやり方に対してどうやって守るのか? 基本的には4つの対策が挙げられる。

・相手がカウンターを始めやすい、ピッチの内側のゾーンでボールを失わない

・15本のパスを通してチームメイトたちとの近い距離を獲得し、即座にボールを奪い返す

・敵の最初のパスを受ける、つまりサイドで待ち構えている選手に素早くプレッシャーをかけに行く

・デスコルガードの最後の選手の動きを予測して警戒する。これはそれを監視するセンターバックの基本的な役割だ

そして、ペップはくぎを刺すように次の言葉を発した。

「ボールとともに主導権を握ろうとするチームにとって、デスコルガードの対処は守備の基本なんだ!」

というわけでまた今回もベガルタ仙台対セレッソ大阪の試合のなかから、この被カウンターという部分についてもう少し深く掘り下げて書いていきます。ただしこれはたくさんの、そして複雑な原因が絡み合っているので、なるべくわけてわかりやすく書いてみます。まず最初に、良い状態というのがどういうことを指すのかというと

こんな感じかと。まあこれより良いシーンはあったでしょうけどたまたま見つけたので。で、カウンター対策がうまくいってるかどうかを判断するポイントとしては

・ボールを失った位置はどこか。これは絶対的な位置(相手のゴール前とか)と、相対的な位置(ハーフウェーラインで失ったと言っても味方のFWがそこで失うのと最終ラインのDFがそこで失うのでは意味が違う)という縦の位置とサイドなのか中央なのかなどの横の位置を見ます。上の動画では、相手を十分押し込んで味方の配置が整った状態で仕掛けた結果、相手陣地の深い位置でボールを失っていますね。それならカウンターには距離がありますし、失った直後にボールの周辺は味方の方が多くなっています。

・ボールを失う前に、事前の15本パス(本数が大事なのではなく意図のあるパス)によって、味方は正しい配置になっているか。また、相手がカウンターに移行しづらい状態になっているか。これについては連載の『ボールを握る』を参考にしてください。

・ボールを遅らせることができているか。相手に奪われて展開されたとき、最初の縦パスに対してしっかりとボールにプレッシャーをかけているかはとても大事です。これは被カウンター時の人数にもよりますけど、足りてないなら遅らせるなど

・相手のFWの裏への抜け出しを警戒し対応できているか。ボールを握るということは自分の後ろには広大なスペースがあるので、攻撃しているときも常にカウンターを警戒しながらポジションを修正する。

などがあります。少し長くなったので、この「カウンター対策で気をつける4つのポイント」をまとめると

1.自陣や内側(中央)でボールを失わない

2.攻撃時から味方の配置を整え、相手を分断させておく

3.失った直後から激しくプレッシャーをかけカウンターに蓋をする

4.常にカウンターを警戒しデスコルガードにスペースを使わせない

でしょうか。ではこの試合でベガルタ仙台の被カウンター対策でマズかったシーンを振り返ってみます。

まずはこの先制された失点シーン。個人的な意見として、この一連のプレーで一番謎だった部分は「ボランチのロングパス」です。たぶん三田かな?と思うんですけど、後方からボールを繋いで、これからボールを循環させて味方の配置を整え、相手の配置を分断させようとしているときにいきなりロングパスを中央へ蹴っ飛ばしてボールを失います。

CBが外側へ開き、内側のレーンに落ちてきたボランチが、相手の裏のスペースを見つけます。まあシャドーが裏へ走る動きをしていますし、これがチームとして狙っているプレーなのであれば問題ないのですが、これだと味方は間延びしてしまうためセカンドボール奪取率は下がるでしょうし、相手が整然とした配置で待ち構えている場所に長いボールを蹴っても奪われる確率のほうが高いでしょう。

後方からゆっくりと前進しているときに、配置を整え待ち構えてる場所へ、相手を分断する前に仕掛けたこのプレーが、仙台として狙っている形なのかどうかは不明ですがあまりおすすめはしません。まずこれが気になりました。

ボールは跳ね返され、間延びした仙台のスペースをうまく使われてカウンター発動です。そして、ここで問題なのは、後方の人数は足りている(相手よりも多い)状態なのに、ボールに対して最終ラインの選手がプレッシャーをかけなかったことです。もしこういう状態になってしまったときは、まず相手の推進力を止め、ボールを遅らせることです。

先ほどの4つのポイントから見ると、中央で失っていて、また前進している途中で、味方の配置が整う前で間延びしていて、逆に相手は自陣で体勢を整えて待ち構えており、ボールを失った直後は味方が孤立していてボールを奪えないうえに遅らせることも出来ず、後ろに広がるスペースを簡単に使われて失点しました。

ここでもうひとつ『始まりの夕食会』という項目からグアルディオラの言葉を紹介します。

この2ヶ月あまり、バルサのようにプレーしろ、などと言ったことも、仄めかしたことも1度もなかった。喜んでもらうべきは、毎回スタジアムに足を運んでくれる7万1000人の観客だ。ペップを喜ばせるためにサッカーをするのではない。ペップが選手たちに望んだのは「臆病にならず自分自身であれ」ということ。ペップの説明は続く。

「選手たちに言ったんだ。みんなで一緒に前進してくれ。もしチームが分断された状態でボールを失ったら、どのドイツのチームであろうと、息もつけないほどの速さでカウンターを仕掛けてくる。ダンテが斜めに長いパスをロッベンに出すのは、自陣からではなくピッチのセンターに着いてからにしてくれ。もしロッベンがボールを失ったとしても、近くにチームメイトがいたら、問題なくボールを取り返せる。しかし、ダンテがあまりに早く自陣からパスを出したら、ロッベンがボールを失ったとき、確実にカウンターを仕掛けられてしまう」

では次の場面。

ボールを循環させて味方の配置を整えながら相手を押し込んで、仙台として狙い通りの良い攻撃をしていたのですが

この場面。ひとつパスを出せば完全にフリーです。シュートでもパスでもなんでもできますね。しかしここで中へのドリブルを選択し、中央で入れ替わるような形でボールを失います。これだと本来カウンターに蓋をするはずだった選手がいませんし、数的にも不利な状況となり致命的なピンチとなりました。あと柿谷がどこからどのくらい走ったのかを見ると面白いですよ。半端ない。

で、徐々にお気付きかもしれませんが、ベガルタ仙台は、守備が悪くてカウンターを受けているというわけではないんですよね。ボールの失い方だったり、攻撃してるときの準備だったり、リスク管理なわけです。つまり極端に言えば攻撃に問題があるからカウンターを受けるわけです。

ボールを握って相手を押し込み、攻撃しているときから常時カウンターに備えてポジションを修正し、ボールを回しながら味方は配置を整え、逆に相手は孤立させ、奪われた直後からプレッシャーをかけて奪い返し、またボールを握る。ベガルタ仙台はこの最初の段階は結構出来てきています。これからはリスクを管理することで『ずっとオレのターン』ができるかどうか。そこが大事になると思いますよ。

サッカー ≫ 今週の人気記事