ベガルタ仙台がやってるのはポゼッションサッカーでもパスサッカーでもない

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リベロの河童
投稿者: ( 河童戦術ブログの管理人 )
公開日:2017年07月03日( 5か月前に投稿 )

昨季までのリアクション型カウンターサッカーから大きく舵を切り、今季のベガルタ仙台はボールを握って相手を押し込むサッカーに挑戦しています。で、これをなんて呼ぶのかで少し足並みが揃っていないような気もしたので、その辺について書いてみます。というわけでまずはこれまでに書いたベガルタ仙台の記事から。

 

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このようなサッカーに対して『ポゼッションサッカー』とか『パスサッカー』という表現を使っているのを見たりしたのですが、残念ながらその表現は本質を突いてないような気がします。というわけで今回はその辺について。

たしかに最近のベガルタ仙台は、相手を押し込んでボールを支配することにより、ポゼッション率はかなり高くなっています。そのため「ポゼッションサッカー」という表現を使われる方がいらっしゃるのかもしれません。しかし、ボールの保持率それ自体にはなんの意味もありませんし、ポールポゼッションというのはあくまでも手段であり道具です。それ自体が目標でも目的でもないんですよね。いわば副産物のようなもの。

また『パスサッカー』という表現も同じで、それ自体が目的ではありません。1試合に何本パスを繋いだとか、何%ボールを支配したとか、そんなことは重要ではないのです。ちなみに「ショートパス」とか「ロングパス」などと、パスの種類というのも特に大事なことではありません。

ボールポゼッションはただの手段や道具でしかない。目標でも目的でもない。監督(ペップ)はこのように説明する。「もし事前の連続した15本のパスがなかったら、攻撃から守備へのいい移行を実現するのは不可能だ。最も大事なことはボールを持つことや、多くのパスをすることではない。意図をもってやることだ。パスの本数やポゼッションの数字は重要ではない。大事なことは、ボールを持つ意図、ボールとともに何をするかを追求すること、チームがボールを持っているときに何を目指すか。それが重要なんだ!

じゃあ今季のベガルタ仙台がやっているサッカーを何て呼べば的確なのかといいますと「ポジショナルプレー」という言葉がしっくりくるような気がします。というわけでポジショナルプレーとはなんだという部分について。

BASICS

チェスで勝つためには相手のキングをメイトにするか、もしくは勝利が明らかになるような駒得をすればいいわけです。現在の局面からメイトや駒得を狙う手が見当たる場合には話は簡単です。

しかし、そのような局面ばかりではありませんし、そのような局面に持っていくまでが難しいと言えます。では、明らかなタクティカルな狙いが無い局面の場合にどういうことを考えればよいのでしょうか?

そこで有用なのがポジショナルプレイという考え方です。ポジショナルプレイとは駒の位置(ポジション)が良くなるように指す指し方、考え方のことを呼びます。チェスの駒(ピース)にはそれぞれに特性というものがあり、それを生かせるか生かせないかが、ゲームの行方を決める重要なファクターになります。それゆえ、駒得のような直接的な狙いの有無に関わらずピースのポジションを良くする手を指すこともゲームで勝つことにつながるわけです。つまり、一言で言えばポジショナルプレイというのは駒の位置が良くなるかどうかで指し手を決める指し方のことです。

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ミドルゲームを御する – 局面の戦略を知ろう | チェスのすゝめ

ミドルゲームは膠着状態になることが多く、なかなか有効な戦術を見出すことが出来なくなります。ミドルゲームで重要なのは、盤上をよく観察し、少しでも有利に、少しでも不利にならないように慎重にプレイすることです。 具体的なコツとしては、自分の戦力を保持し、相手の戦力を削るように意識してプレイすることが挙げられます。その為に、盤面で守りが弱い場所・駒がないかをチェックし、その穴を埋めるようにプレイすることを心がけてください。また、逆に自分が有利な場所、しっかりと機能している駒もチェックし、相手の穴を少しずつ開けるようにプレイすることが大切です。 ちなみに、チェスではこのようなプレイを”ポジショナルプレイ”と呼びます。

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このように、おそらくですがポジショナルプレーの語源はチェスだと思われます。この考え方をサッカーでも取り入れているわけですが、サッカーのポジショナルプレーというのは基本的に、ピッチ上のどこに優位性があるのかを探し、それによってゲームを支配するという戦い方のことを指します。ではその優位性ってなんだというところなのですが、有名なところでは『数的優位』『質的優位』『スペースの優位』『ポジションの優位』などがあります。詳しくは英語でよければこちらが参考になるかと思います。

で、ベガルタ仙台が今季やっているサッカーで重要なのはボール保持でもパス数でもなく『配置』です。この配置というのは味方のだけでなく相手も含まれてまして、ポジショナルプレーの大事なもうひとつの原則は対戦している相手をコントロールすることです。これをグアルディオラは「目的は相手を動かすことだ。ボールではない」と表現しています。つまり、今季のベガルタ仙台が取り組んでいるプレーですが、ボールを握ることが大事なのではなく、ボールで何をするかが大事なのです。また、パスが重要なのではなく、ボールは「相手を動かすため」に動かすのです。

相手を動かして敵の整然とした配置を崩す。また相手を動かして崩しながら自分たちは整然とした配置につく。そのためにパスを使う。パスを使うことでパス数が増え、ボールの保持率も結果的に増える。こういう考え方だと思われます。つまり大事なのは相手を動かし、自分たちは優位な配置につく。ここが大事なんだと思います。

じゃあどこからどこまでがポジショナルプレーなのかというと、攻撃の始まりの部分から仕掛けるところまでです。後方から攻撃を始め、すべての局面で数的優位をつくりながらゆっくり全員でハーフウェーラインまで前進する。ここで急ぐと間延びしてカウンターを受ける。そして15本パスによって味方は適切な配置につく。カウンターに備えて警戒し、相手をおびき寄せてから攻撃したい場所へ送る。相手はボールを追いかけて配置が崩れる。これによってもし奪われても即座に奪い返す準備が整う。ここまでがポジショナルプレーで大事なところですね。

これにより準備が整ったら仕掛けます。コンビネーションプレーだったり個人の質で勝負だったりするわけですが、その前にポジショナルプレーで適切な配置についていれば仕掛けが失敗してもすぐに奪い返してまた配置を整える、と「ずっとオレのターン」が可能になります。

最後に。ここまで書いておいてなんなんですが、ぶっちゃけベガルタ仙台のサッカーを何て呼んでるかというのは人それぞれですし個人の意見を尊重します。ただ、理解してほしいのは、ボールを保持することや、パスをたくさんすることが大事なのではないということ。重要なのは、味方が適切な配置につけているか、相手を動かして配置を崩せているかです。よって、ポジショナルプレーという言葉でなく、別の言葉で例えるなら「配置的プレー」だったり、「チェスサッカー」というのもいいかもしれません。重要なのはボール保持でもパス数でもなく配置。この視点で試合を見ることをおすすめします。

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